2017年6月13日 ホテイ蘭とツクモグサが咲く八ヶ岳(赤岳~硫黄岳周回)

横岳の山頂付近へ差し掛かる頃、斜面に咲くツクモグサに出会えた。 残念ながら花は開いていなかったが毛深いその花はしっかりと存在感を主張していた。

ホテイ蘭とツクモグサを見に八ヶ岳へ登ってきた。
八ヶ岳と言えば険しい岩場が主体の山であり、あまり花を見に行くという印象はない。
しかし、ここだけにしか咲かないと言われる花があると知り、以前からこの花の咲く時期に登ってみたいと思っていたのである。
その花はツクモグサ、日本では八ヶ岳、白馬岳、利尻岳などでしか咲かないそうだ。

生憎、南岸沿いは雨だったが長野以北はほぼ晴天に恵まれて、北アルプスの穂高連峰や槍ヶ岳も遠望出来て気持ちがいい登山となった。
お目当てのツクモグサは残念ながら開花しておらず蕾しか見られなかったが、ホテイ蘭、オヤマノエンドウやキバナシャクナゲ、ハクサンイチゲなど綺麗な花々を見る事が出来た。

今回は美濃戸口から入山して南沢を登り、赤岳、横岳、硫黄岳を経由して赤岳鉱泉へと下山するルートを取ったが、この山域は山小屋も多く点在していて、今回立寄った硫黄岳山荘では何とウォシュレット完備、外は約6℃と涼しかったのでオーダーした白玉ぜんざいもとても美味しく頂く事が出来た。
けっこう険しい山域だが、これなら女性でも安心して楽しめる素晴らしいフィールドである。

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朝早く起きてみると雨が降っていた、それもかなり激しい雨である。
こんな時は普通は山行を中止するのだが、昨日までの予報で八ヶ岳は晴れとなっていたはず、諦めきれずもう一度天気予報を確認する。
結果、やはり山梨から長野方面は曇りのち晴れであった。
雨を前にして出発を躊躇していたが、恐らく南岸低気圧がこの雨を降らせているのだから北側に位置する八ヶ岳は晴れるに違いないと判断して思い切って出かけて見る事にした。

一路、中央道を西へ走り諏訪南ICから赤岳山荘へ向かった。
原村から未舗装の林道へ入ると轍があって車高が低い私の車では底を擦りそうで、思わずスピードを下げた。

まだ日が昇る前なので薄暗い林道を走っていると前方に一人歩いている人が見えた。
通り過ぎざまに見ると登山の恰好をした若い女性である。
一旦通り過ぎたが登山口まではまだ先が長い、登山者と分かっていてこのまま行ってしまうのも忍びないと思い停車して乗っていくかと聞くと、乗せて欲しいと返事が返ってきた。
どうやら林道手前まで車で来たものの、やはり底を擦りそうなので歩くことにしたらしい。長野在住でこの山域には良く来るのだそうだ。

3キロ程走ると赤岳山荘の駐車場に着いた。私は準備があるのでここで彼女と別れ、先に行って貰った。


駐車場から歩き始めると直ぐに美濃戸山荘前に出る。


山荘前にある南沢と北沢の分岐を右へと曲がって南沢を目指す。


美濃戸山荘から歩き始めると暗い林の中に凛とした姿で咲くホテイ蘭に出会った。
まるで暗い地面に天から舞い降りた天女の様なその姿に暫くの間見惚れていた。

我に返って何度かシャッターを切るのだが早朝という事もあってまだ暗いので真面に撮れたという手応えが感じられなかった。
三脚は持っていないから地面にすっかりしゃがみ込んでやっと撮ったのがこの一枚である。お陰で今もこの姿を見る事が出来る。

ホテイ蘭の咲く場所から南沢に沿った道が続いた。

気が付くと御小屋尾根に朝日が当たり始めていた。

やがて自分の歩いている登山道にも日が差し込んで木々やコケが輝き始めた。目論見通り晴天になるのは確実だった。

行者小屋に着くと屋根越しに大同心、小同心の尖峰が見えた。

行者小屋のテント場には幾張かのテントが張られていた。

赤岳と中岳の間には雲が沸いてきており、早くあの頂きに着きたいと思った。

ここは多くの道が交差する分岐点、私は文三郎尾根へと向かう。

ここから暫くは急な階段が続く。

息を切らせて振り返るといつの間にか行者小屋が遥か下に見えた。

だんだん中岳と阿弥陀岳が大きく迫ってきた。

こちらは険しい様相の赤岳の稜線。沸立つ雲も心なしか尖って見えた。

これから向かう赤岳以北に連なる横岳、硫黄岳方面。


更に遠方へ目をやると、北アルプスの山々が遠望出来た。穂高連峰から槍ヶ岳までずらっと並び、キレットまで確認出来た。

写真を撮っていると、下から追いついてきた若者に北アルプスが見えるよ!と教えた。
若者は振り返って、感動の声をあげた。そしてあの槍ヶ岳に何時か登りたいと言う。
すかさず、このスピードで登ってきた君なら直ぐにでも登れますよ!と言うと、若者の目が一瞬輝いたように思えた。
この若者は昨夜は行者小屋のテント場に泊まっていたそうである。明るくて気持ちがいい若者だった。

中岳と赤岳のコルに着いた。阿弥陀岳がでっかくて迫力があった。

赤岳へ近づくと次第に険しい岩稜帯へと変わり、キレット、権現岳への分岐へ差し掛かった。

振り返ると阿弥陀岳に続く御小屋尾根が見える様になった。


遂に赤岳山頂に到着。
この時、駐車場で別れたあの彼女とすれ違った。行者小屋から地蔵尾根を登ってきた様だ。

写真を撮ってもらったり、持っていた行動食を食べながら暫く話し込んだ。
どうやらこの赤岳には冬を含めて何度も登っていて、東北の山への遠征や山スキーもこなすかなりの上級者らしい。
一頻り楽しい山談義が出来て楽しかった。

山頂で若い彼女と別れて私は北へ進んだ。目の前に赤岳頂上山荘が見える。

頂上山荘を後にして下り始めると眼下に赤岳展望荘が見え始めた。

小さな個室が並んでいて何時か泊まってみたい小屋だが、最近はテントばかりなので何時になるやら分からない。

暫く下ると、地蔵の頭に着いた。地蔵尾根との分岐点だ。赤岳には雲がかかり始めていた。

前方を見ると三叉峰が立ちはだかる。

横岳が近づく頃、振り返ると雲が取れて赤岳方面がクッキリと見渡せた。美しい稜線だった。

暫く見ているとまた雲が押し寄せてくる。赤岳の急斜面に立つ展望荘が良く見えた。


横岳の登りに差し掛かった急な岩場にツクモグサの群落があった。
残念な事にどの花も開いていいなかったが、その茎から萼にかけて伸びる毛が特徴的な花だ。
もう少し天気が良ければ開花してくれたのかもしれない、しかしこの稀有の花に出会う事が出来ただけでも十分満足である。

周辺にはオヤマノエンドウがここぞとばかりに咲き誇っていた。この花、海辺に咲くハマエンドウと親類かも知れないが、ここのはより色が濃くて生命力が溢れていて美しい。

この周辺に見られた花々を紹介しよう。何れも岩場にひっそりと咲く可憐な花ばかりである。

花を見ている内に横岳に到着。丁度集団が休み終えて歩き出したところだった。

眼下には行者小屋から見えた大同心、小同心が見える。

更に下ると前方に見え始めたのは台座の頭だろうか。その向こうには硫黄岳が見える。

台座の頭を過ぎるとすぐ下に硫黄岳山荘が見えた。

硫黄岳山荘は少し広いコル状の場所にひっそりと建っていた。


中に入ると若い女性が忙しそうに働いていた。驚いたことにトイレを借りたところ、何とウォシュレット完備である。
テーブルには恐らく学校の先生と思しき人と小屋の管理人風の人たちが会合していて、学校登山の相談をしている様子だった。
この小屋に泊まったなら、生徒も良い思い出が出来そうだ。私がそうだった様に、その経験が基で大人になっても登山を続ける人が生まれるのだろう。

外はそこそこ涼しかったからメニューにあった白玉ぜんざいを注文、この一杯はとても美味しく心も体も温まった。

元気になって歩き始めると直ぐに硫黄岳山頂に着いた。ただっぴろい山頂だ。

振り返ると歩いてきた横岳から赤岳、阿弥陀岳方面が一望できた。

硫黄岳から暫く下り赤岩の頭に着くと左へと曲がって赤岳鉱泉方面へと向かった。

硫黄岳の直瀬的な稜線が綺麗に見える。

下山途中、僅かに残っていた残雪。もうすっかり夏山の様相である。

赤岳鉱泉に到着。建物の裏側を通って下る。

赤岳鉱泉の上部には険しい稜線が続いている。

北沢を下る。この辺りの川は水に含まれる鉄の為か岩が真っ赤に染まっている。

やがて林道に降り立ち、かなり長い林道歩きが続く。

漸く出発した北沢、南沢の分岐へと帰ってきた。凡そ9時間の周回となった。

駐車場に到着。疲れてはいたが、目的の花にも出会えたし天気に恵まれて景色も堪能できた事で十分満足出来た山行だった。

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<今回のルートと所要時間>行動時間:9時間15分(休息時間含む)

赤岳山荘駐車場(5:30)→行者小屋(7:18)→赤岳(9:18)→地蔵の頭(9:56)→横岳(10:50)→硫黄岳山荘(12:00)→硫黄岳(12:27)→赤岩の頭(12:50)→赤岳鉱泉(13:33)→赤岳山荘駐車場(14:45)

<標高データ>