映画 「アイガー北壁」
映画 「アイガー北壁」
映画「アイガー北壁」は今年の3月頃から上映が開始されていたが、ようやく仙台でも5月22日から仙台駅前のチネ・ラビータで上映されるとの情報を得て直ぐに見に行った
率直な感想は、登山をするものとして見て良かったと思える作品だった
この映画は、1936年の夏ベルリン五輪開幕の直前、ナチス政権は前人未到のアイガー北壁に初登頂した者には金メダルを授与することを決定、この話を聞いたドイツの女性新聞記者ルイーゼは故郷のかつての恋人で現在登山家として頭角を現してきたトニーと相棒のアンディにアイガー北壁への挑戦を勧める。最初は乗り気でなかったトニーも熱心なルイーゼの誘いに挑戦を決める
映画の登攀シーンでは、彼らの後を追うオーストリア登山家ヴィリーとエディが登場し、登山途中で落石に遭い負傷してしまったヴィリーを助けながら4人で行動する事になるのだが、急変する天候の中、垂直の岸壁を怪我人を抱えての壮絶な登攀が始まり、最後には誰もが想像出来ないラストシーンを迎えるのだった
映画のストーリーは史実に基づいた実話である。私も何となく結末の内容は知っていたのだが、あまりにもリアルな登攀シーンに引き込まれてしまい、最後は何とか頑張って欲しいと祈る様な気持ちになって見ていた
日本の「剣岳 点の記」も同じだが、落石や雪崩のシーンは一体どうやって撮影したのかと思うほどリアルに描かれている
特に、実際に北壁を登る登山家たちのシーンと、ホテルで取材活動するルイーゼの表情や暖かい暖炉のシーンが交互に描かれており、登攀の厳しさが余計リアルに伝わってくる
なにより驚いたのは、手作りのハーケン、縄のザイル、普通の布のコート、毛糸だけの手袋などの当時の装備だ
手作りのハーケンから伸びた縄のロープを振り子の様に使って垂直に切り立った岩場をトラバースするシーンやツエルトも無く布のコートだけでのビバークなど、身につまされる様なシーンの連続で思わず身震いするほど怖かった
ここに描かれているのは、単に壮絶な自然との闘いや危険な登攀シーンだけではなく、未踏の北壁への初登頂に挑戦する登山家の気持ち、挑戦を勧めた恋人の心の変化、けが人が出てからの登頂したい気持ちと安全に下山したい気持ちの葛藤など、現在でも実際に身の回りに起こりうる人々の心のさまが見事に描かれた秀作だと思う
唯一の救いは、昔の恋人のルイーゼが夜中にホテルを飛び出して登山鉄道の線路を徒歩で登り、トニーたちが降りてくる岸壁までよじ登って救おうとするシーンだ
彼女が実在の人物かどうかは不明だが、実在するなら彼女のその後の人生や気持ちを知りたいと思った