福井と近畿の名峰を訪ねて(その➂ 大峰山編)

2018年5月13-14日 福井と近畿の名峰を訪ねて(その➂ 大峰山編)

強風と雲の中をひたすら登って辿り着いた八経ヶ岳だったが、この後劇的に天気が回復して大峰山脈の縦走路が見えた時は本当に感動的だった。

伊吹山から下山後その足で向かったのは大台ケ原だった。大台ケ原の駐車場は広くて車中泊も可能そうだし、明日は前線が通過するので悪天の可能性が高いが大台ケ原であればルートを短縮したりする事も出来そうだと考えたからだ。

しかし翌日起きてみると、雨は弱かったものの周囲は真っ白で隣の車さえ見えにくい状況だった。ただの雨だけなら周囲の花や植生を楽しむ事も出来ただろうが深い霧が立ち込めていてこれでは歩いても楽しくないどころか危険でさえある。

朝方車で訪れてカッパを着て山へ入っていく人たちも居たが結局お昼頃まで様子を見て諦めて、近くの道の駅に行ったりして時間をつぶした。

そしてこの日は大峰山の麓にある洞川(どろかわ)温泉のさら徳旅館に宿泊して翌日大峰山へ登る事にしたのだった。

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「福井と近畿の名峰を訪ねて」その➂は大峰山登山の話である。

登山の話の前に、熊野街道や天川付近の様子や宿泊した洞川温泉について少し書いておきたい。

大台ケ原から宿泊地洞川温泉へは東熊野街道(R169)から国道309号線を通って天川村方面へ峠越えをする必要がある。

この309号線を走ってみると流石近畿三大酷道と言われるだけあって国道とは言えほぼ林道としか思えない道だった。

この辺りはとても山深くて東熊野街道を走っているとこんな景色が連続していた。

コンビニやガソリンスタンドも少ないので、今回立寄った道の駅、吉野路「上北村」は貴重な立寄り場所である。

そんな道の駅付近にある「ゐざさ」というお店で柿の葉寿司やゐざさ寿司、桜寿司などの詰合せ弁当を購入しておいた。

今夜の宿は急遽予約したので素泊まりとなっていて、宿の人の話では温泉街に遅い時間に着くと食料品が買えない恐れがるという事なので予めお弁当の購入が必要だったのだ。

しかしこのお弁当、当地の名物である柿の葉寿司を始め他の寿司それぞれが大変美味しくて大満足の一品だった。

東京や横浜の有名デパートにも出店しているそうなので機会があったらもう一度食べてみたいと思った。

国道309号線を通って明日登る大峰山の八経ヶ岳への登山口を過ぎると道は天ノ川という美しい渓谷に沿って走っていた。

車を停めて渓流近くに降りてみると、とても澄んで美しい流れだった。

ここの水は「やまとの水」として認定されているらしい。

天ノ川渓谷の北側にはみたらいという渓谷があって地図を見ると多くの登山道が整備されいている様だ。

その渓流添いには深い木々の林の中に時折立派な山藤の花が見られた。

みたらい渓谷の道を走るとやがて洞川温泉に到着した。思っていたよりずっと大きな温泉街でびっくりした。

さら徳旅館は昭和な雰囲気の古い旅館だった。

ここの温泉街は熊野川の源流ともなっている山上川のほとりにあり、標高が820m程もあるので冷涼な気候から関西の軽井沢とも呼ばれているそうだ。

温泉街に着いた頃、雨が酷くなってきたので喫茶店に入り甘い物を食べてホット一息つく。

この日は日曜日なのに天気が悪くて観光客もまばらだったが、お陰で喫茶店の女店主からお忍びで来ると言う芸能人の話やこの温泉街の歴史など色々な話を聞く事が出来て有益だった。

明日は大峰山に登るつもりだと伝えると、ここは昔から大峰山への登山口として有名で皆さん温泉街を北側へ少し行った所から登ると教えてくれた。

大峰山(八経ヶ岳)に日帰りで登るには行者還トンネル付近から登るものと思っていた私にはピンとこない話だったので地図を見てみると、洞川温泉側から登った場合には距離が長くとても日帰りは無理そうだった。

色々話をしている内にどうやらこの地で大峰山といえば山上ヶ岳の事を指していて、頂上付近には大嶺山寺山上蔵王堂という建造物があり歴史的にも有名な修験道場とされていた事が分かってきた。私が単純に大峰山脈の最高峰である八経ヶ岳が「大峰山」だと思いこんでいたに過ぎない(山と高原地図には両山とも大峰山と並記されていた)ようだ。そして恥ずかしながら大峰山脈といえば、この辺りから熊野に至る80Kmにも及ぶ大山脈でありこの縦走路が大峯奥駈道と言われている事を漸く理解したのだった。

そんな話を終えて「さら徳旅館」に帰る頃には更なる豪雨となっていたが、明日の朝には回復すると言う予報信じて早く寝る事にした。

翌早朝、宿の外を見るとまだ雨が降っていて霧も立ち込めていた。

遅くなるほど回復するはずだが標高の高い登山口の様子も気になるので7時頃宿を出て登山口となる行者還トンネル西口に向かった。

昨夜の豪雨で天ノ川の水量はかなり増していたが、全く濁りが見られないのには驚いた。豪雨でも山の土が流れ出ない程しっかりした森があるという事なのだろう。

登山口にある駐車場には既に地元近くの車1台が泊まっていて先行している登山者が居るらしい。

この時まだ風が強く、登山に適した天気とは言いにくい状況だったが先行者が居ると言うだけで少し心強かった。

早速駐車場代1000円を支払い、登山口にあった登山者カードに記入して山へ入った。

最初、道は穏やかな細い渓流添いを進んだ。

直ぐに綺麗な石楠花の花が出迎えてくれて嬉しかった。

木の根を踏む道を登りながらも新緑の中に石楠花が沢山咲いていて綺麗だった。

やがて石楠花に混じってシロヤシオが咲き始めていた。花が小さくて始めはシロヤシオだとは思わなかったが、葉の形状や花の形を見ると明らかにシロヤシオだった。

やがて奥駆道への合流点に着いた。この先は熊野方面へと続く長い奥駆道と言われる道を歩くのだ。

コケの中に一輪だけ咲く綺麗な花を見つけたが、まだ開花もしておらず何の花かは分からない。

弁天の森という場所に到着、霧で景色は見えない。

やがて聖宝理源大師像がある昔の修験者の宿があった場所に出た。ここだけは不思議に風もなく不気味なほど穏やかだった。

標識には道標と共に大峯奥駈道と書かれている。

霧で神秘的な雰囲気の道が続いていた。

何処まで続いているのか先が見えなかったが、歩いてみるとかなり長く木道が続いていた。

時折、オオカメノキの花が咲いている。

ちょっと雨宿りしたくなる様な可愛い葉っぱに出会う。これは後で聞いたところ、オオイタヤメイゲツと言う大きな木になるらしい。

霧の間に突然現れた大きな弥山小屋。

 

天気が悪いので弥山には寄らず八経ヶ岳を目指す。この辺りの地面にはコケがびっしり張り付いていた。

八経ヶ岳への最後の登りを登っていると先行していた人が下ってきた。

軽く挨拶をすると、ようやく人と出会ったのでもう一度登り返して写真を撮りあいましょうと言う。

私としても願ってもない提案なので快諾して一緒に登り始めた。

そして遂に八経ヶ岳山頂に着き、撮って貰った写真である。残念ながら景色は雲の中だ。

この方は関西在住の人で大峰山に登るのは2回目だと言うが前回の記憶があまりないそうだ。

折角登ってきたのだし天候はどんどん回復するはずなので雲が切れるのを一緒に待つことになった。

そして30分程、今までに登った山や関西の山の話などをしていると目の前の雲が切れ始めたのだった。

出始めた青空をバックに再度撮って貰った。

あっと言う間に南側に伸びる大峯奥駈道の稜線が見え始めた。劇的な山の変化に遭遇すると何時も驚かされ、その都度感動させられる。

東側には天ノ川が流れていて、その遠方には昨日行った大台ケ原方面が見え始めた。

見え始めた周囲の山々を教えて貰ったりしながら更に30分程も頂上で過ごした後、揃って下山を開始した。

弥山方面まで来て振り返ると八経ヶ岳の形がはっきり見えた。

さっきは霧で気が付かなかったが周囲の木には赤く膨らんだ蕾を沢山付けた木々が密集していた。

これは恐らく天然記念物のオオヤマレンゲの木なのではないだろうか。

弥山の山頂には天河神社の奥社があった。

弥山の鳥居から見えた八経ヶ岳。

さっきは雲の中だった弥山小屋がはっきりと見える。

こちらは北側に伸びる大峰山連峰、右側のピークが山上ヶ岳かも知れない。

二人で下山していると登ってくる何人かの人と交差した。中には大荷物を背負って大峰奥駆道を7泊もして歩き通すという強者もいて驚かされた。

すっかり晴れて青空に青葉が美しく見えた。

ここで大峯奥駆道から分岐して行者還トンネルへと下る。

やはり日に照らされた石楠花は色が華やかに見えて美しい。

そして無事登山口の行者還トンネル西口に降り立った。

色々な話をしながら下山出来たのであっという間だった。

同行して頂いた方と最後に挨拶を交わして別れた後、明日はもう一度大台ケ原を歩くために169号線へと向かった。

道の駅の川向うにある上北山温泉で汗を流してから大台ケ原へ向かう事にした。

大台ケ原の駐車場付近から西を見るとさっき登った八経ヶ岳がシルエットで見える。

図らずも悪天候のため宿泊した洞川温泉で聞いた貴重な話や当地の名物笹の葉寿司の味は忘れることが出来ない思い出となった。

そして八経ヶ岳で出会った石楠花とシロヤシオの花、山頂で出会った人と一緒に雲が切れ始めた時に見た大峰山連峰の雄大な景色も感動的だった。

今回の経験を踏まえて今度はオオヤマレンゲが咲く頃、洞川温泉から山上ヶ岳を経由した後、八経ヶ岳へと登ってみたいと思う。

何時か機会があれば是非チャレンジしてみたいものである。

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<大峰山へのルートと所要時間> 行動時間約6.5時間(休憩時間1時間含む)

行者還トンネル西口(7:40)→聖宝理源大師像(9:18)→弥山小屋(10:10)→八経ケ岳(10:40-11:40)→弥山(12:00-12:10)→聖宝理源大師像(12:54)→行者還トンネル西口(14:16)

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  1. alpinist-aki より:

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