八幡平Safety Camp
2010年2月13日~14日 日本雪崩ネットワーク主催の八幡平Safety Camp
今回は、JAN(日本雪崩ネットワーク)が主催している雪崩に関する講習会Safety Campに参加してきました
参加の理由は、BC(Back Country)スキーを続ける以上雪崩に関する基礎知識やリスク回避、万が一の時の対処法などを一通り知っておきたかったためです
この講習会では実際にBC Tourに出かけて体験が出来るとの事で参加を決めました
場所は私の憧れの八幡平エリアです!!
しかし、最初の自己紹介と挨拶が終わった段階で、既に何か場違いの感じが
講師はカナダやニュージーランドなどで活動経験がある人、他サポートが3名。受講者は9名、内2名は東北エリアの山岳ガイド、自分を除く6名は主に秋田、岩手、宮城から来たBC歴数年のベテランばかりだったのです
参加したまでは良かったのだが、その後のドタバタ劇はいかに
憧れの山、岩手山の雄姿です 綺麗ですね~
9時集合の為、早朝5時半に仙台発、約2時間半で松尾八幡平IC着、旧八幡平スキー場方面に向かう途中、雄大な岩手山の麓を車で走りながらルンルン気分で撮影しました~天気も良さそうです
8時半には講習会場の「なかやま荘」に到着しました
<2/13 1日目>
**午前中の座学**
雪崩の事例や雪の変態の話(気象条件や地形などで雪の性質が様々に変化すること)など、雪崩に関連する様々なお話を聞きました。特に興味を持ったのは、欧州では国が雪崩に関する基本的な情報を提供しているが、日本やUSA、カナダなどはJANの様な民間組織が個人からの情報を基にHPなどで公表しており、世界共通の用語、データの取り方や判断レベルを規定して共有化を図っていることでした
午後からは、講座会場屋外に出て実践教育の始まりです
**午後の実習**
午後の第1部は、ピットチェックという雪の斜面に横2m奥行き1m、深さ1.5mの穴を開けて雪の安定状況の調査をするデモです
何日もかけて降ったり、止んだり、融けたり、固まったりして出来た雪の層を観察して、雪の履歴書みたいなデータをとったり、ルッチブロックテストという雪の安定性試験などを見せて貰いました
切り出した30cm角のブロックの刺激を与えると、上から数10cm下に潰れやすい層があってブロックがズルッと滑るのが観察出来ました。この弱い層の雪質は、霜ざらめ雪という種類に変化しているみたいです
皆さん興味深々で見ています
午後第2部は、もしもの時のセルフレスキュー演習!!
セルフレスキュー 場所は講習会場の周辺です
忙しくてあまり写真も撮れません、何しろ人の命が懸かってますから
雪の中に人に見立てたビーコンという発信機を埋めて一人ずつ捜索開始です
埋まっているのが1個(一人)なら2~3分で発見できます。でも2人以上となると何んと5~8分も・・因みに15分以上埋まってると生存率が急降下するそうですから焦ります
ましてや、ビーコンを持っていない場合、残留物から推定するかゾンデ棒という棒で雪面を挿して探すしか方法はありません。やっぱりビーコン、ゾンデ棒、スコップは必携ですね。。。。練習してみると重要性も良く分かります
夜はお風呂に入って、地元ガイドの受講者の方が地酒を持ってきてくれたので、皆で乾杯して気持ちよく就寝したのでした
明日は8時から旧八幡平スキー場を登ってBC研修ツアーの始まりです
<2/14 2日目>
旧八幡平スキー場入り口駐車場
8時半にスキー場の駐車場に到着、最初に地形をよく見て、どのルートで登るかを検討します
基本的に雪崩地形を避けてルートを決定、リーダーが先頭を切って登り始めます。ボーダーが4人、テレマークが8人(リーダー、付き添い2名含む)の総勢12人のツアーです
リーダーはかなりのスピードで登っていったので、ついて行けたのはガイドの二人、その他はテレマークの人、ボーダーが続いてバラバラと登ります
私は最初5番手位だったのに途中でスキーシールが剥がれるトラブル発生、付き添いさんに応急処置をしてもらい最後尾でゼイゼイしながら追いかけます。やはり経験不足と、最高年齢だし体力の違いを感じざるを得ません(悲)
滑りたい急斜面でのピットチェック
標高1400m位の滑りたい急斜面で、2人ずつのグループで南斜面と北斜面に別れてピットチェックを行ないます。勿論、雪崩れない地形を選択したのですが、斜度計で計ると38度、これは統計的に最も雪崩が発生する確率の高い斜度です!
結果は、私たちの担当した北斜面はGood しまり雪であまり弱い層はありません。ルッチブロックテストという切り出した雪の上を叩くテストでも大きな問題はありませんでした。南斜面も同様ですが、若干弱い層がある事を示すデータもあり、やはり北斜面の方がベターとの判断です
2mより下のほうの断面は、ペンでも穴が開かないレベル。この硬さのレベルは「ナイフ」と言い、凍っている状態です。因みにJANでは断面の硬さを5段階で表し、「こぶし」「1本指」「4本指」「ペン」「ナイフ」の順で規定されています。
ここまでは、登りに苦しんだけど、まあ何とかついてこれたのですが
テストを終わって山頂北斜面に着いた所から、いざ滑降です
え~~ちょっと待ってくれ~~ セッピの先の40度位の斜面を降りると言い出すではありませんか
しかも、斜面の下のほうは林になっていて、そこも30度はありそうな林間斜面が続いています
リーダーが一言、、不安のある人は居ますか?
当然、、「はぁ~い」と言ったのは、、、私だけ???・・・・(汗、汗)
今まで雪崩れに合わないリスクマネージメントとして、グループでの行動が重要とか言ってたし、小さい声で出来ればあっちのコースに行きたいとか言っては見たが、、、聞こえなったのか
リーダーは、「では貴方は2番手で、私の後をついてきて下さい」・・・・・だって
この時、なんで来てしまったのだろうと、つくづく後悔したのでした
後のまつりですね
えイヤーとか言いながら、40度の斜面に突入!
およそ「テレマークスキー」ではない、別の「何とかスキー」と言うジャンルにも入らない、兎に角転ばない様に無様に必死で滑るのみです!!
少し安心したのは、膝くらいの深さまでフッカフカの粉雪だったので、転んでも骨折はしないだろうと思えた事くらいでしょうか。地元のガイドさんが言うには、このコースはあまり人が来ない言わば「八幡平のアドベンチャーコース」だとか何とか
その後も急斜面の林間コース下りが続き、木に激突する事も無く、やっと緩斜面に着いた時にはヘトヘトです
緩斜面が平らになったところに着いたのが13時、やっとありついたお昼ご飯は、ただの菓子パンだけど、やけに美味しかった
でもまだまだ講習は続きます、次の斜面で、4人中3人が埋まってしまったケースでレスキュー訓練開始~!
最初の1回目はビーコンを持っていない人が探し出せず18分で終了。この場合1人は助けられなかった事に
2回目は、捜索リーダーを決めてグループ捜索を行い約13分位で全員救出出来ました~やれやれ
埋まった人を効率よく掘り出して、即搬送する為のクサビ形状の穴掘り練習風景。約4分で完成です
最後に昨日の研修会場に戻って、最終まとめの研修やアンケートを書いて終了となりました
今回、スキーのレベルや経験が浅過ぎて苦労の連続でしたが、得られた知識と実践訓練はとても良い経験となりました
やっぱり東北の人たちは男女問わず素晴らしい経験と技術を持っているし、雪に対する感覚が私とは異なるなぁ、、とつくづく感じられた2日間だったです
きっと、このHPは見ることはないと思うけど、私の下手糞なスキーの後をずっと我慢して追いてきてくれた皆さんに感謝したいと思います
しかも、せっかくのパウダーを無茶苦茶にしながら先行しちゃって御免なさい、上手くなってから何処かでお会いしたら先を譲りますので(汗)
最後に、バックカントリーに出たら雪崩の可能性について常に感度を高くして行動すること、その上で雪崩と遭遇してしまった場合には現場の状況を良く観察し即座の判断で機敏な行動をとる事が必要なことを学びました。細心の注意力と慎重さで行動をとっていても一度雪崩にあってしまった場合には、レスキューの訓練を経験した人たちがお互いにビーコンを持っていたとしても生還する確率はそう高くない事も分かりました。バックカントリーで遊ぶという事はそういう危険性を孕んでいるという事を肝に銘じておく事が必要だと思います。