十勝岳 遥かなる大地をゆく(その3)
2016年7月11日
朝から降り続く雨が止むのを待っていた。
天気予報ではこの後晴れる予報なのに一向に雨は止まなかった。
大雪からトムラウシへの大縦走を終えたばかりなので、無理して今日登らなくても良いと思いながらも、天気予報と窓から見える十勝岳を交互に見ながら後1時間程待ってみようと思った。
しかし白銀荘のロビーでは、昨日一緒に宿泊したAさんが出発しようと準備している。
その表情には、よし登るぞ!という固い意志の様なものが感じられ、つられて私の気持ちも少し揺らいでいた。
確かに風は吹いておらず、雨と言ってもそれ程きついものでもないし、予報でも回復すると報じているのだから決断の時かも知れない。
心なしか山の上が明るくなり始めたのを見て私も準備を開始したのだった。
結局7時半頃、私とAさんは雨具を付けて一緒に出発した。
Aさんは仙台から来られた方で、お互い単独行で同室になった事もあり東北やアルプスなどの山の話を交わす様になった。
やはり、こんな天気の時は一人で歩くより二人の方が楽しいし心強いものだ。
登山口はテント場の左奥にあった。
吹上温泉は正に十勝岳に登る登山者の為の施設の様なところだ(勿論、一般のお客さんも沢山いるのだが)。
トラバース道を30分程進むと、望岳台からの登山ルートへと合流した。
丁度この辺りが十勝岳スキー場のリフトが設置されていたあたりではないだろうか。
だとすると昔この斜面を滑ったに違いない。
その当時、望岳台の下部にあった「国立大雪青年の家」という宿泊施設に泊まって毎日バスで望岳台辺りにあったスキー場まで通って滑った。
ここのスキー場、風が吹くと地吹雪になり転ぶと雪煙の下に潜ってしまって見えなくなる程のパウダースノーだった記憶が残っている。誰かが転ぶと衝突しない様に止まらなければならないほどだった。
スキーが終わると帰りはバスに乗らず、スキー場から青年の家まで林間コースを一列に並んで滑って帰るのが常だった。
ところが林間コースは新雪が積もっていて斜度がないので前の人のトレースの上を滑るのだが、ちょっと油断するとコケてしまう。そんな時、後ろから早いスピードで追いついてくる地元の女の子にせっつかれると余計焦って転んでしまう自分が情けなかったのを覚えている。そんな経験も今は懐かしい若き日の思い出である。
あのスキー場も今は撤去されてただのガレ場に戻ってしまったと思うとちょっと寂しい。
そんな事を考えながら、ガレた登山道を黙々と登っていった。
暫く登ると美瑛岳へと通じるルートとの分岐に着いた。
今日はこんな天気なので迷わず十勝岳の方へと向かうことにした。
更に登ると十勝岳避難小屋が現れた。比較的新しい小屋に見える。
メアカンキンバイ
色のない山に咲く黄色い花、こんな花に出会うと何故かホットする。
広い尾根に出た。こんな日はペンキや標識が無いと迷ってしまいそうだ。
振り返ると、下界の方角には青い空が出ていた。漸く晴れ始めたのかも知れい。
こちらは美瑛岳方面。相変わらず上部には厚い雲が纏わりついている。
十勝岳の斜面に残った雪渓は硫黄で黄色く染まっていて、今だ火山活動が活発な事を示していた。
遂に登頂! お疲れさまと言いながら写真を撮りあった。
しかし頂上からは何も見えないし、再び雨が降りそうな気配まで感じて早々に下山を始めた。
避難小屋に寄るとトイレは無く、噴火など万が一の時の為にヘルメットや水、防塵マスクなどの装備が多数設置されていた。
あっという間に下山し、望岳台からの登山道に別れを告げて白銀荘へと向う。
十勝岳は雨模様の登山となり残念だったが、思い出のスキー場付近を歩くことが出来て良かった。
明日はもう一つの目標である富良野岳に登るつもりだ。
明日は何とか晴れてほしいものだ。
「大雪山~トムラウシ山 遥かなる大地をゆく(その1)」はこちら
「大雪山~トムラウシ山 遥かなる大地をゆく(その2)」はこちら
「富良野岳 遥かなる大地をゆく(その4)」はこちら
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