秋の裏剣を歩く 室堂~池の平~欅平(後編)

2012年10月6日~8日 秋の裏剣を歩く 室堂~池の平~欅平(後編)

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仙人池にて  

<今回のルートと時間>
10/6(土) :川越~夜行バス~富山(7:30)=バス=室堂(10:40)→別山乗越(13:40)→剣沢テント場(14:40)
10/7(日) :剣沢テント場(6:40)→真砂沢ロッジ(9:10)→二俣(10:50)→仙人池分岐(12:50)→池の平小屋(13:30)
10/8(月) :池の平小屋(5:00)→仙人池(6:30)→仙人温泉(8:20)→雲切新道→仙人ダム(11:20)→阿曽原小屋(12:20)→欅平(17:20)=宇奈月(18:40)=富山(20:45)~夜行バス~川越

昨日は広大な室堂の美しい紅葉をゆっくり見物し
それとは対照的に黒く先鋭的な岩稜が印象的な剣岳の懐で初雪の中のテント泊となった
今朝は運良く雪も止んでくれたお蔭で剣沢の雪渓も無事下る事ができた
二俣から真砂沢を下っていよいよ最深部である仙人山への急登が始まる

真砂沢ロッジから暫く沢のゴーロ脇を下ると、左手から三の窓雪渓からの沢が合流する二俣に着いた

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二俣の橋を渡る

左手の長い雪渓の先には三の窓があるはずだが厚い雲に隠れていて見えない
二俣を過ぎると仙人峠への激しい登りが始まった
急峻なこの登山道は歩き易いが林の中で展望はまったくない

45分ほどひたすら急登を続けると突然展望が開けた
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運よく三の窓が一瞬見えた
しかし直ぐに雲に隠れてしまう
今度あの雪渓をスキーで下ったらどうかとI君から悪魔の誘いがあったが
勿論  もっての外 論外だ!

周りの山は厳しい景色ばかりだが目の前の木々は綺麗に色付いていて目を楽しませてくれた
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紅葉した葉
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ドングリの実
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真っ赤になったナナカマド
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カエデ
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リンドウの蕾

仙人池と池の平との分岐に着くころにはかなり疲れが出てきた
ここは今夜の宿泊地である池の平まではもう少しのところだ
ここまで来れば気持ちにも余裕が出てくる
分岐を左に曲がり目的地である池の平に向かった

この付近で深紅に紅葉したチングルマの大群生に出会って思わず感嘆の声が出た
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チングルマの群落

写真を撮ったりして暫く休憩した
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やがて前方下方に「平の池」が見える
山奥の静かな美しい小さな池だ

思わず坂を下って行きたい衝動に駆られたが、雨が何時降ってきてもおかしくない
冷たい雨の中でテントを張るのは気が重いから
兎に角この先に見える小屋で受付を済ませてテントを張ってしまいたかった

小屋に着くと急に風が出てきて一気に体が冷えた
明日は欅平から宇奈月まで下ると言うと、小屋の人はとても親切に説明してくれた
行程が長いから11時間程度は見ておいた方が良いらしい

テント場には既に数張りのテントが張られていて
風当たりの少なそうな池平山寄りにテントを張って中に入る
冷たい風から漸く逃れられて暖かかった

長い雪渓下りや仙人峠までの急登の疲れがどっと出て強い眠気が襲ってきた
しかし、今の内に池を見物に行こう
二人とも意を決してテントを抜け出して坂を下り始めた
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静かな平の池
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周りの紅葉が映って綺麗だった

曇っているせいか辺りの木々の色は暗く沈んで濃く見えた
辺りは静まり返っていて無風だったからか
水面に映る景色はまるで現実の風景の様に見えて
この世のものでは無い様な神々しい雰囲気をも醸しだしていた

静寂を破って 突然大粒の雨が降り始めた
大慌てでカッパを着込んで50m程の急坂を登り返す
この雨が夜まで降り続いたから、とうとう小屋の写真を撮り損ねてしまった
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池の平小屋は左上の鞍部にあった

大雨の中を小走りで帰る途中
驚いたことに一輪だけ咲き残ったチングルマを見つけて立止まる
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遅咲きのチングルマ

この時期に咲く花は少なく、華麗な一輪を見つけられて嬉しかった
テントに戻って休んでいる内にテント場は団体で一杯になった
学生らしい隣りの団体は、どうやら明日北方稜線に向かう様子だ
暫く山談義で盛り上がっていたが何時の間にか静かになった
我々も雨の合間を縫って夕食を食べると早々に就寝する

夜中に目が覚めると
雨の音が止んでいた、、やけに寒い

テントの入口を開けようとすると、ジッパが凍っていて開かない
力ずくで開くとフライがバリバリに凍っていた
外は満天の星空、天の川も見える
テントの入口から寒さを忘れてずっと見入ってしまった
どうやら良い天気になりそうだった

寒くて4時過ぎまでシュラフから出ず、ぬくぬく過ごしたが
今日の出発は早い
仕方なくテントから頭だけ出して朝のコーヒーを沸かしだした
I君も眠い目を擦りながら食事を始めた

テントにへばり付いた氷を叩き落として撤収するが
多量の水気を含んでずっしり重かった
5時前、ヘッデンを付けてまだ真っ暗な池の平小屋を出発
今日は今までで最も長い行程だ
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5時20分過ぎ、剣が仄かに明るくなる
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朝日を浴びて赤くなり始めた北方稜線の峰々
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後立山のシルエット
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ナナカマドと剣の峰々
写真では分かりにくいが、中央の左側上部に剣岳本山の先鋒がほんの少し顔を出していた
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居合わせた数人の人たちと、綺麗な日の出のひと時を過ごす
絶景に誰もが時を忘れて見入っていた
美しい風景に心を奪われて時を忘れた
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氷の薄化粧を纏った美しいチングルマの葉
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ついに後立山から朝日が昇った
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朝日に照らされて輝きだした
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足元のチングルマの群落も輝いた
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仙人池ヒュッテがすぐ下に見える
さあ、仙人池を見に行こう・・・・

そして仙人池に立ち寄ると
幸運にもここでも息を呑む様な景色が見られた
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仙人池の水面に映った剣岳と北方稜線
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稜線のアップ
写真では分かりにくいが中央の影の奥に本山が重なってい見えた
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逆さ剣は実物より色が濃くて美しく見えた
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池の平方面の紅葉も美しい

いつまで見ていても飽きない景色だ
池の淵で撮影している人に尋ねると、この時期は毎年来ているそうだ
この景色を見れば、毎年撮影に来たい気持ちが良く分かる
あまりに綺麗な景色につい時間を忘れてしまった

漸く下山を再開したが、ここで過ごした時間はとても貴重な時間だった
この後は時間を取り返すつもりで下山に集中する
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脇見を振らず歩いて1時間半程で仙人温泉小屋に着いた
ここは一度は入ってみたい温泉だが、今日は先を急がねばならない
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小屋と沢を挟んで対岸にある源泉から湯けむりが上がっている

暫く平坦な道を経たあと、仙人ダムまでは急な雲切新道が続いた
とても厳しい急坂である
これを登りに使うのはかなり厳しいと感じた

見えるのは後立山の山々
私にとっては未踏の山々である
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暫くすると道は美しい渓流に沿って続く

沢登りで剣に来たと言う男女4人グループが凄いスピードで抜いて行った
我々同様、欅平から電車で下山するらしい
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途中道草をしたとは言え、出発してから6時間後に漸く仙人ダムに着いた
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標識の方向にあるのはダムの建屋の入口だった

入口をはいるとダムの中のトンネルが現われる
トンネルを抜けた後、ダムの脇から30分程の登りが待っていた
急坂の下山の後、こんな登りが意外にこたえる
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やがて黒部渓谷沿いに切られた細い崖道が始まった

崖下は数百メートルも切れ落ちている
道幅が50cmから1m程どしかないので緊張を強いられる上
山側から岩や木の枝が出っ張っていて時々頭をぶつけるから要注意だ
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12時過ぎ、阿曽原小屋に到着

既に沢登のグループが休んでいた
ここにも良い露天風呂があるらしいが、入れないのが残念
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我々は先を急ぐ
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途中現われた見事な滝
15時過ぎ、筋分歩いたと思った頃、標識があった
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標識を見るI君
標識には「太鼓」、仙人ダムまで8.2Km、欅平まで5.4Km、と書かれており
全長13.6Kmのうち約6割しか歩いていない事が分かった
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向こう側の崖に歩いてきた道が見える

殆んどアップダウンは無いが、常に緊張を強いられるため
あまり飛ばせないのだ
焦らず一定のペースを心がけるしかない
足下は覗くのも憚られるほどの崖だ
躓いても命取りになりかねない
途中、抜かして行った沢登りグループの姿はまったく見えなくなった

欅平の最終トロッコ電車は17時25分だから
2時間あれば十分間に合うはずだ
きっちり1時間に一回5分休憩を取りつつ歩く

警笛の音が渓谷に鳴り響いていて近くに居るはずなのに
いくら歩いても下降点に辿り着かなかった
少し焦りが見え始めた頃、漸く欅平への標識に辿り着く
ここからは滑落の心配がない坂道だった
I君と猛スピードで坂を駆け下りる

欅平に着いたのは、出発の5分前
駅でビールを買うのを諦めて切符を買う

トロッコ電車を待つ集団の中に沢登りのグループがいて
間に合った我々を見て労いの言葉を掛けてくれた
数少ない会話の中にも温かいものを感じて嬉しかった
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電車は満員の乗客を乗せて走った

外は直ぐに暗くなり、夕方の風を切って進む車上はダウンを着ても寒かった
約1時間ほどで宇奈月に着いた
計画では、JRで富山に向かう前に宇奈月で温泉に入る予定だったが
一本遅くなった為にお風呂に入る時間がない
仕方が無いから次の電車の時間まで近くのおでん屋で祝杯をあげた
久しぶりの生ビールと熱いおでんが胃にしみ渡る

宇奈月からは約1時間半で電鉄富山駅に到着
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電鉄富山駅
駅員さんに近くの入浴できる場所を聞くと、壁にちゃんと施設が書かれていて
親切に道を教えてくれた

温泉に入れなかったのは心残りだったが富山駅近くの銭湯は気持ちよかった
駅前で夕食を食べて22時半の高速バスで帰路に着いた

目まぐるしく変わる天気と風景の中、慌しく駆け抜けた裏剣の縦走が終った
この山行は一度も山頂を踏まないコースだったが
最終日に晴れて絶景が見られてとても満足だった
疲れた体にバスの振動が心地よく、今度はぐっすり眠れた

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