黒部源流を巡る旅(第2話)太郎平小屋→黒部五郎小舎
2011年7月30日~8月3日 黒部源流を巡る旅(第2話)太郎平小屋→黒部五郎小舎
【7/31(日)】 晴れのち曇りのち雷雨
太郎平小屋(5:00)-北ノ俣岳(7:05)-赤木岳-黒部五郎岳肩(10:25)-黒部五郎岳往復-黒部五郎小舎(13:40) 泊
早朝3時頃には支度を始める人たちがいて自然と目が覚めた。8時前には寝ていたのだから睡眠は十分だった
自分も4時前には起き出して乾燥室の荷物やザックの整理を始めた
外は雨が上がっていたから5時には出発しようと真っ暗な自炊室でヘッドランプを頼りに自炊を始めた
あまりお腹は空いていないが、今日は最も長い行程だからしっかり食べておく必要がある
昨日のご夫婦も予定通り雲ノ平へ向かうらしく準備していた
朝食を取って仕度を整えて玄関に立つと、小屋の主人が一人ひとりに挨拶していた
外にでると辺りは既に明るくなってきていた
さぁ、予定では今日は10時間程歩かなければならないのだから頑張ろう
太郎平小屋を右に回ると木道がひかれていて30m程先で二俣に別れている
左に曲がれば薬師沢から雲ノ平方面、真直ぐ太郎山へ向かえば黒部五郎岳方面となる
標高が高い山は見えていたが、雲ノ平は真っ白な雲海で覆われていて幻想的な景色だった
この木道の分岐の先では若い女性2人組みが日の出を待つ様に薬師岳方向を向いて立っている
雲ノ平方面へ行く人の中に若い女性だけのパーティーや単独行を多く見かけた
日の出を待つ山ガール 薬師沢に下る前に日の出を見ようとしているのだろう
日の出前の薬師岳
私も日の出を期待しながら時折薬師岳方向を振り返りながら太郎山を目指して登り始めた
太郎山を越える頃には東の空に浮かぶ雲が朝日に照らされて薄赤く光るのが見えた
朝日を受ける水晶岳 山肌にまとわり着く様に流れる白雲が美しい
雲ノ平方面に下る人々
暫く歩くと、薬師岳から朝日が登る。同時に目の前の稜線や北ノ俣岳の頂上付近が赤く朝日に照らされ始め、時間と共に下に下るのが見えた
やがて雲海の向こう側の鷲羽岳や水晶岳の山頂付近や下の雲海も部分的に照らされて美しい日の出ショーが始まった
日の出の瞬間
前方には北ノ俣岳や黒部五郎岳が綺麗に見えた
何とかこの美しい景色を写真に写そうと頑張るが、あまりに広大な自然のショーだから、限られた画角に切り取るのはとても難しい
輝きだす北アルプスの山々と雲海
チングルマ
振り返ると太郎平小屋が小さく見えた
そうこうしていると、メガネ君が颯爽と歩いてきて追い抜いていった
快調に飛ばしている感じだった
北ノ俣岳に近づくと今度はお花畑が迎えてくれる
今まで分散して歩いていた登山者がお花畑で自然と足止められて集まってしまう
一面に広がるお花畑
チングルマは終盤に近いがハクサンイチゲやイワカガミが群落していて美しい
もうメガネ君は先に行った様子だったが、仲良し4人組はここで代わる代わる写真を撮り合っていた
自分もゆっくり写真を撮ったので予定より遅れてしまった
北ノ俣岳
北ノ俣岳に到着すると、既に仲良し4人組が休んでいたので、リーダー格の人に頼んで頂上の標識の前で記念写真を撮ってもらった
振り返ると中学生位の女の子と両親の3人組も登って来ていた
先の行程の長さを考えるとあまりノンビリしてもいられないから先に立って出発した
まだ幾つかのピークを越えなければならない
左前方に見えた水晶岳と赤牛岳
漸く黒部五郎岳が近づいてきた
黒部五郎岳の登りに差し掛かると急斜面なので道が九十九折につけられていた
最初は軽快に登っていたが次第に息が切れて重い荷が肩に食い込むと自然とペースが落ちて時々立ち止まる
途中で先程の親子3人組が追いついてきた。お父さんは一人で大荷物を背負っていたが一定のスピードで確実な登り方だったから、あっという間に先に行ってしまった
散々苦しんだあと、ガレ場をトラバースすると黒部五郎岳の肩に到着した
既にメガネ君や親子3人組が着いていて軽い食事を食べている
黒部五郎岳の肩
私はここでザックをデポして空身で頂上を目指した
黒部五郎岳頂上 残念ながら展望なし
大きな石が積み重なった頂上には誰もおらず、雲に覆われていて展望もきかなかったから写真を撮ったら直ぐに肩まで下った
頂上を過ぎてそのまま進めば黒部五郎岳の稜線を越えて小屋に向かうコースとなるが、曇っているしカールのお花畑と沢の水を飲む目的もあったからカールを下る道を選択した
雪渓が残っているカールを下ると、五郎岳の名前の通り大きな岩がゴロゴロしていて荒々しく、岩と花畑と緑のコントラストが何とも美しい所だった。写真を撮りながらゆっくり下った
雪渓が残る黒部五郎カール
チングルマの群落
ミヤマダイコンソウの群落
コバイケイソウとカール
稜線は雲に覆われていた
カール下部から上を見上げる
カールの底に着くと清流が出現して涼しかった
沢を渡る場所で休憩して水を飲むととても美味しかった
この流れも黒部川に流れ込む黒部源流の一つなのだ
最高に美味い水だった
黒部五郎岳の険しい稜線
大岩とお花畑
カールの景観や水をたっぷり楽しんだ後、今夜の宿泊地である黒部五郎小舎に向かった
途中で雨が降ってきたし、かなり疲れが出ていたので大岩に腰掛けて休んでいるとメガネ君が追いついてきた
今夜テントを張るのか尋ねると、昨日彼はテントにすると言っていたが迷っていると言う。これから悪天候となるなら、自分もどうするか悩ましいところだ
せっかく背負ってきたのだから使わないのは勿体無いし濡れた装備でテント泊も結構やっかいだと思った
二人とも結論がでないままメガネ君が先に立って歩き始めると、自分も最後の力を振り絞る様に歩き始めた
途中でまた雨が降った
黒部五郎小舎
長く厳しい歩きを経て、漸く小屋に到着すると小屋の入口でメガネ君が生ビールを美味そうに飲んでいた
やはり今夜はテントにしたらしい
今夜も雷雨となるのだろうか、明日の高天原ではテント場が無いから今夜使わないとテントを1泊しか使わない事になる、そうだ、折角持ってきたのだからと自分もテントに決めて手続きを始めた
テント場は小屋から50mほどの場所にあった
それ程広くない敷地に既に3張り程張られていて、二人ともその近くにテントを張った
流石に今日は長旅で疲れた、まだ早い時間帯だからテントの中で横になって暫く休んだ
外は雨も止んだようで周りはシーンと静まり返っている、横になったままテントの匂いを嗅いでいるうちに眠ってしまった
どの位たっただろうか、気がつくとテントを激しく叩く雨が降っていた
まぁ暫く我慢していれば止んでくるさ、小雨になったらご飯を食べようと思って富山放送のラジオを聴きながら食事の準備を始めた
テントの空気穴から外を覗くと、激しい雨で水が川の様に流れていた
近くの人が外へ出てテントの外周に溝を掘っているが焼け石に水だった
このまま降り続けば夜になる、自分のテントはシングルウォールだしフライシートやグランドシートも付けていなかったので若干の不安があった
その後1時間ほど経っても一向に止む気配がない、その上雷がなり始めた。山の雷は結構過激だった、稲光が光る度にラジオからノイズが出る
その時、娯楽番組の放送が中断してアナウンサーが緊急連絡を伝え始めた、
「富山県全域に雷、大雨洪水注意報が発令されました、特に山沿いの地域では激しく降り続く恐れがあるので土砂くずれや洪水に細心の注意を・・・・」
この放送を聴いて、新潟に停滞して大被害を出したあの前線が富山県側に降りて来た事を悟った
今夜はずっと降り続くに違いない、判断するなら明るい今しかないと思った
テントから出て小屋に向かうと道は深い川と化していて登山靴が浸水しそうだったので道の縁や石の上を伝って行った
暗くなってからでは何をするのも悲惨だ、このまま装備が全て濡れれば日中の日の当る時に乾かす時間が必要になる
出来れば明日も早朝から歩き出したい。幸い小屋は空いているというので軟弱な判断だったが小屋へ退避する事にした
テントに帰って隣のメガネ君に退避する事を伝えると、自分も考え中だったとの事で私が撤収した後小屋に非難してきた
二人並んで小屋の土間で夕食を作ることになり、食べながら色々話す事が出来た
最初はとっつき難かったメガネ君も話し始めると止らないくらいだった。登山暦は自分よりかなり豊富でテントも10年目と古く、この豪雨で水漏れが酷くてシュラフが濡れ始めていたらしい
明日は三俣を通って双六小屋のテント場でテントを張って一泊し、テントを乾かしてから下山したいという事だった
黒部五郎小舎は雨でごった返してはいたが比較的空いているらしく、ここでも1人1枚の布団が与えられ、装備は乾燥室で乾かす事が出来た
テントを撤収した事は悔やまれたが、この時ばかりは小屋のありがたさを思い知らされた
部屋で隣り合わせた人と談話室で話をしていると、仲良し4人組の一人が入ってきた
彼らは黒部五郎岳の稜線ルートを通って来たとの事で、途中から姿を見なかった理由が分かった
稜線歩きでは時々展望もあって良かったそうだ
その後も明日槍ヶ岳を目指すという隣人とビールを飲みながら山の話をしていると、メガネ君も参加してきて話題は尽きず、気がつくと消灯の時間が迫っていた
寝る前に天気予報を見ると、依然雷注意報が出ていて雨のち曇りとなっている
もし明日の天候が回復しなければ自分も双六から新穂高温泉へ下山しようと思った
第1話 大宮→太郎平小屋編へ
第3話 黒部五郎小舎→高天原山荘編へ
第4話 高天原山荘→雲ノ平キャンプ場編へ
第5話 雲ノ平キャンプ場→折立編へ
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