鳳凰三山 後編(地蔵岳、観音岳、薬師岳縦走)

2017年10月26-27日 鳳凰三山 後編(地蔵岳、観音岳、薬師岳縦走)

鳳凰小屋を暗いうちに出発して地蔵岳に登って見ると、神々しい日の出の風景を見る事が出来た。

2日目は早朝暗いうちに鳳凰小屋を出て地蔵岳へと登って見るとオベリスクと観音岳の間から日が登ってきて観音岳の脇に聳える富士が赤く染まった。

素晴らしい朝の絶景を楽しんだ後、早朝の清々しい空気の中稜線を歩いて観音岳山頂に着くと、澄んだ空気のお陰で360度の大展望が開けた。特に目の前に聳える甲斐駒、仙丈ケ岳、白鳳三山や南アルプスの南部の山々の展望は素晴らしく長々と景色を楽しんだ。歩き始めに悩んだコース変更の時、拘って午前中の縦走を重視した甲斐があったというものである。

これらの景色を目の前にしていると、昔これらの山々を登った時の光景や出会った人たちの事などを思い出して懐かしかった。勿論南アルプスにはまだまだ登っていない数多くの山があるが、光岳を除いては所謂有名な山にはほとんど登った事になる。

登山者にはそれぞれの山域で登りたい山というものがあると思うが、年を重ねるにしたがって自分なりのケジメをつけておきたいと思う様になった。私にはテレマークスキーを楽しんだりスノーシューで山野を歩く楽しみもあるし、必ずしもピークを目指す志向者でもないが、来年には光岳を登って南アの完登を実現したいものである。

大げさな表現をすれば、私にとって今回の三山縦走はその前に乗り越えるべき意味のある登山だった。

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この日の鳳凰小屋は宿泊人数も少なくて快適な環境で消灯後直ぐに寝たのに寝つきが悪かった。

悶々としている内に眠った様だが、早朝3時頃から出発準備を始めた人の気配で目が覚めた。

目が覚めた後も日の出を見に行こうかノンビリ寝ていようか決めかねていたが、5時前ころになって漸く行こうと決心する。

真っ暗で寒い小屋の中を手探りで荷作りして外へ出ると外は更に寒くて息が白くなった。

早く歩かないと凍えそうになるので、ヘッデンを点けて昨日歩いた同じ道を地蔵岳へ向けて出発した。

昨夜まで迷っていた観音岳へのトラバース道は真っ暗な未踏の道が危険であることと小屋の前の清流が凍っていて渡渉が難しいなどの懸念があったから敬遠したのである。

 

暗い路を登り始めると、後ろから人の気配がした。振り返るとかなりの速いペースで追いついてくる。シラビソの林の中で追いつかれると若い男性の登山者が更に速いペースで追い越して行った。

私は昨日のプレ登山で、林の中から左斜面の開けたザレ場へトラバースする事を知っていたが、その若者は真っ直ぐと林の中を進んで行ってしまった。

その時は別の登山ルートがあるのかも知れないと思ったが、暫くすると林の中に見えていた明かりが反転して下りはじめ、こちら側へと向かうのが見えた。やはり暗い路は間違えやすいものだ、今回は未踏のトラバース道を選択せずに昨日歩いた道を来て正解だったと思った。

暫くすると観音岳の斜面左側に背景が赤く染まった富士山のシルエットが見えた。朝日の赤いグラデーションと左右対称な富士のシルエットが美しくて暫く立ち止まって見つめていた。

オベリスクの際まで登るとオベリスクと観音岳に挟まるように富士山が垣間見える。

地蔵岳の山頂付近から見ていると、やがて朝日が昇り始め、空の雲までが真っ赤に染まっていった。

すっかり日が出るとオベリスクの奇岩の様子が浮かび上がって不気味な感じがする。

更に日が高くなると紅葉の木々とオベリスクが対照的な景色を作っていた。

甲斐駒ケ岳にも朝日が当たり始めていた。

空が青く輝き始め、雲がピンク色に変化すると油絵に描いたような美しさが醸し出された。

誰も居ない山頂で、美しい山の日の出風景を見るのは贅沢なものである。

この時、オベリスクの岩場から出てきた人と出会った。何とオベリスクに登ってきたというのだ。

話を聞くうちに自分も登って見たくなった。

岩の途中、まだ大して登っていないが下を見ると高度感が増してくる。

最後の大岩の手前まで登ると小さな碑が立っていて、鳳凰山大神と書かれていた。

手を伸ばして最後の大岩へ登る直前、ここまでで引き返す事にした。登る事は可能だったが、下る時はかなり危険を伴うと感じたからだ。

本来ならば仲間と一緒に来て最後の数メートルとは言え危険ならば確保すべき場所だろう。実際登ればは大したことは無いかも知れないがここは自分の感覚を優先する事にした。

ピークの岩の下から見ると眼下に地蔵岳の山頂、赤抜沢の頭の向こう側には北岳の雄姿が見えた。これだけでも十分満足だった。

地蔵岳の山頂へ降り赤抜沢の頭まで来ると、さっきと反対側からの景色が見える。

こちらは白鳳三山。

北側斜面に来ると若干雪が増えて部分的に凍っていた。ご夫婦とすれ違った時、観音岳の北斜面は十分注意して行くべきとのアドバイスをいただいた。

危険な事は分かっていても、人から念を押されることで更に確実な行動が促される。

お陰で観音岳へと無事に着く事が出来た。山頂からは素晴らしい360度の展望が得られた。

こちらは北岳と間ノ岳。雪はまだまだ少ない感じである。

こちらは仙丈ケ岳。

北側には甲斐駒ヶ岳と地蔵岳。

南側遠方に見えるのは農鳥岳と塩見岳だろうか。

東北側には八ヶ岳全山が見えるほど素晴らしい展望だ。

鳳凰山の山頂は風もなく景色も良いのでかなり長い時間過ごす事が出来た。

山頂に居合わせた人たちに別れを告げて次の薬師岳へと向かう。

 

縦走路の先には薬師岳らしいピークが見える。

白鳳三山との間に切れ込んだ深い谷。この谷の底には南アルプス林道が走っていて、広河原、北沢峠方面へと繋がっている。

稜線には雪が残っているが既に緩んでいて問題はない。

薬師岳に着くと山頂は大らかなピークとなっていた。

観音岳方向を振り返る。こちら側から見るとゆるりとした稜線である事が分かる。

山頂付近から東側へと入って青木鉱泉への下山路へ入った。

暫くは急なダケカンバなどの雑木林を進んだ。単調で長い中道の始まりだ。

かなり長い急坂を下った後、漸く開けた笹の道へ出た。

その先は唐松の林へと続いていた。

1500m付近まで下ると登りの時と同じく紅葉が目を楽しませてくれる。

モミジの紅葉。

いい加減嫌になる下りが終わる頃、道は小武川と思われる流れに沿っていた。

青木鉱泉への近道を入ったが、この先のドンドコ沢に掛かっていた橋が流されて渡れず、止む無く戻って林道を歩く羽目になった。

やっとの事で長い中道の下山を終えて青木鉱泉の駐車場へと戻ってきた。

そう言えば、昨日の先行者の人はどうしただろうか、そのまま引き返したのだろうか、もし同じ道を縦走したならここから更に御座石鉱泉まで戻らねばならないはずだ。

そんなことを考えながら帰路についた。

途中、韮崎にある「武田乃郷 白山温泉」に立ち寄った。

ここは源泉かけ流しで気持ちがいい温泉だった。大人@600。

併設されていた蕎麦屋さんで定番の天ぷら蕎麦も頂いた。こんなにテンコ盛りでも胸焼けなし、とても美味しかった。

 

<おわり>

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<登山ルートと所要時間>

鳳凰小屋(5:10)→地蔵岳(5:45-6:45)→赤抜沢の頭(6:55)→観音岳(8:00-8:45)→薬師岳(9:14)→青木鉱泉(12:33)

 

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鳳凰三山 後編(地蔵岳、観音岳、薬師岳縦走)” に対して2件のコメントがあります。

  1. 伊藤 より:

    いいお天気でしたね。写真がすんばらしい。佐々木さんの計画にあやかりたくなります。

    オベリスクは見てすぐに登るの諦めた記憶があります。南アルプスでも鳳凰三山はアクセスの良さは別格ですね。ドンドコ沢は登れるようになると良いですが。

    1. alpinist-aki より:

      コメントありがとうございます。
      天気が良い日を選んだとは言え風もなく幸運な山行でしたね(^^)
      朝日を見たあとオベリスクから降りて来た人と話して登る事にしましたが最上部はちょっと危険です。
      またどこか一緒に登りましょう!

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