鳳凰三山 前編(青木鉱泉から地蔵岳)

2017年10月26-27日 鳳凰三山 前編(青木鉱泉から地蔵岳)

鳳凰小屋に着いたその足で地蔵岳に登って見ると、あのオベリスクが天に向かって聳えていた。

今年の紅葉も終盤を迎えてそろそろ冬の便りが届く季節になった。雪が降る前に赤湯温泉ベースで苗場山へ登ろうと思い現地へ問い合わせたところ、山頂は大方雪が被っていて広大な山頂の湿原の道は見えなくなっているらしい。それなら前から登ってみたいと思っていた鳳凰三山へ行こうと思い立ち急遽南アルプスへと車を走らせた。

当初青木鉱泉からドンドコ沢を遡上して鳳凰小屋で一泊し、翌日三山を縦走して青木鉱泉へと下山する周回を予定していたが、現地へ着いてみると先日の台風でドンドコ沢は不通となっていた。

仕方なく林道を戻って隣の御座石鉱泉から登る事にしたが、標高2000m付近から上は雪道となり山頂付近では数センチの雪が積もっていた。

前日山小屋へ問い合わせした時には積雪無しとの事だったのですっかり安心してアイゼンを持たずに来てしまった。この事を後悔しながらも小屋に着くと、ご主人が「まだこの程度の量ならまったく問題ないよ」と言ってくれたので少し安心した。

そんなこんなで歩いてみれば、中腹では今年最後の紅葉が楽しめ、薄雪の山頂からは深紅の日の出と360度の展望が望めるなどこれ以上ない程素晴らしい秋山を堪能する事が出来たのだった。

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何時もの様に早朝家を出て薄暗い空に浮かび上がった丹沢山のシルエットが見え始めると、予想通りの好天の兆しを感じて嬉しくなった。

圏央道から中央高速を走って2時間足らずで韮崎ICへ着くと20号線へ出て青木鉱泉へと向かった。

細い山道を通ると先日の台風21号の影響による通行止めがあったり、山の斜面から大量の水が道路に流れ出ていたりしたが何とか青木鉱泉に辿り着く事が出来た。

青木鉱泉の駐車場に着くと1台先着車があり出発の準備をしていた。

話しかけると私と同じコースを歩く様なので、道中宜しくと挨拶して駐車料金を払いに鉱泉の受付に行った。

料金を支払って車に戻ろうと歩き始めると青木鉱泉のご主人が追いかけて来て、予定のコースを聞かれたのでドンドコ沢を登ると答えると、何とこのコースは先日の台風の影響で不通となっているとの事だった。

駐車場へ戻って先行者の人にこの事を告げ、二人でどうするか作戦を話し合った。

第1案は下山ルートと考えていた中道を登り、明日歩く予定の縦走路を歩いて鳳凰小屋まで行き翌日御座石鉱泉へ下山する案。第2案は中道を登って薬師小屋に宿泊、翌日縦走して御座石鉱泉へと下山する案。第3案は御座石鉱泉へと迂回して鳳凰小屋で宿泊、翌日縦走して中道を青木鉱泉へと下山する案。

第1案は本日の歩きが長すぎるし明日の午前中の尾根歩きの楽しみが無くなる。第2案は小屋の予約を変更する必要があるなどの理由から、二人とも第3案で行く事になった。

私はすっかり支度を整え、御座石鉱泉への破線ルートの入り口を見つけようとしたが見つからない。仕方が無いので青木鉱泉の女主人に聞いたところ、このショートカットルートは殆ど使われておらず道迷いの可能性大なので林道を戻った方が良いとの事だった。

御座石鉱泉まで車で行く事も出来るが明日縦走後に青木鉱泉から御座石鉱泉まで歩くのも大変だろうと思い、今日の内に徒歩で林道を戻って御座石鉱泉へと向かう事にした。

林道歩きは長く標高も100m程下って登り返す必要があった為、1時間強ほどもかかってしまった。

着いてみると先程の先行者の人の車が止まっていた。どうやら車で来て明日回収する事にした様だ。

御座石鉱泉の裏手に登山口があった。いきなりの急登だったが朝日が差し込んで気持ちがいい。

急登に喘いで暫くすると周辺の木々が色づいてきた。

青空にオレンジ色のモミジが映えて綺麗だった。紅葉を楽しみながら登ると急登も然程苦にならない。

旭岳山頂と記されている場所に着く。山頂とは言うが、ピークはなく登山道の途中といった風情だった。

左の尾根の上には富士山が顔を出した。山頂付近は白くなっている。

反対側には韮崎の街並みの向こうに聳える八ヶ岳連峰が見える。赤岳だろうか、尖った山頂付近は真っ白くなっていた。

燕頭山の山頂、標高2104mとある。ここにはベンチもあって唐松の紅葉が綺麗な場所だった。

漸く急登も一段落して笹が生い茂るなだらかな道となった。

途中先行者の人に追いついたが、シャリバテでペースダウンしたらしく先に行かせて貰った。

右前方に美しい姿の甲斐駒ヶ岳が見える。手前の山には緑の杉と黄色の唐松林の黄色が斑模様となっていて美しかった。

北側遠方には真っ白くなった北アルプスの連山も見える。

お昼過ぎ、ようやく鳳凰小屋に到着。この辺りも既に雪が積もっていてこの先どの程度の積雪があるか不安になる。

斜度がきつく凍っていれば縦走は危険となるだろう。

受付の若い女性は気さくで愛想が良く、明日も好天なので地蔵岳から朝日を見るなら朝食をお弁当にした方が良いと勧めてくれた。

小屋の受付を済ませるとご主人が出て来て昨日夜半に降った雪だが、この程度の雪ならば全く問題ないと言って安心させてくれた。

まだ時間が早いから、地蔵岳まで行ってくればと言う。

シャリバテの先行者の人も到着して遅いお昼を食べると言うので、私はその足で地蔵岳へと向かった。

シラビソの林を抜けると雪の原に出た。南側には明日登る予定の観音岳が聳えている。

1時間程で観音岳山頂に着くと、目の前にはあのオベリスクが尖っていた。

山頂に立つ地蔵様群。向こうには甲斐駒ヶ岳が見える。

遠くの山から見えていたあのオベリスクが今目の前に聳えている。

至る所に地蔵様が安置されていた。

甲斐駒ヶ岳と左に連なる仙丈ケ岳へ繋がる稜線が見える。

甲斐駒ヶ岳は真南から見ると摩利支天が重なっているからか形も違って見える。

観音岳の右側遠方には富士山も見えた。

取りあえず山頂まで無事歩く事が出来て良かった。明日の朝、道が凍っていない事を願うばかりだ。

下山を開始すると途中で先行者の人も喘ぎながら登ってきた。久しぶりの登山らしく明日長い縦走と林道歩きを歩き通せるか不安だという。このまま登ってきた道を下山するか予定通り縦走するか迷っているらしい。

明日になれば体も回復して元気になっているからきっと大丈夫だろう。そう思いながら一人で小屋へと向かった。

再び鳳凰小屋に戻り日が暮れ始めるととても寒くなった。

ご主人が起した炭の炬燵に今夜泊まる6人と若い小屋番たちが集まって山談義に花が咲く。

炬燵の周りの壁にはキャンディーズやアグネスラムのポスターが貼ってある。若い小屋番たちに聞くとキョトンとして何れも知らない人たちだと言うが、年代からすればまだ生まれる前のアイドルだから当たり前だった。

彼らは山が大好きで、初回だけヘリで運び込んだビールが無くなった時、人力で持ってくるのは大変だから販売を止めようとしたところ、山へ登ってくる人たちは楽しみにしているのだから我々で分担して荷揚げすると言って一人で二箱も三箱も担いでくれたという。若い受付の女性も二箱揚げたと聞いて感動してしまった。

何とも家庭的なこの小屋が人気な理由が分かった気がした。

今日地蔵岳に登ってしまったので、明日は日の出を見る為に観音岳へのトラバース道を行くか、もう一度地蔵岳へ登るか迷っている内に消灯時間が来たのだった。

後半に続く。

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<登山ルートと所要時間>

青木鉱泉(6:55)→御座石鉱泉(8:08)→燕頭山(10:56)→鳳凰小屋(12:35)→地蔵岳(13:45-14:15)→鳳凰小屋(14:55) 泊

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