奥穂高~西穂高~焼岳テント従走(その1 上高地~奥穂高岳編)
2013年8月9~13日 奥穂高~西穂高~焼岳テント従走(その1 上高地~奥穂高岳編)
2013年も夏山のベストシーズンをむかえて
昨年に引き続きI君と一緒に北アルプス屈指の岩稜ルートである奥穂~西穂ルートを歩いてきた
登山を再開してからは何時かは歩いてみたいと思っていた難ルートである
核心部に踏み込んだ後のエスケープルートは殆どなく
約8時間ほども緊張が連続する厳しい路である
唯一天狗の頭付近から天狗沢へ下るルートがあるが
雪渓が残っていた場合にはアイゼンが必要となる
計画では、天候を見て奥穂高山荘での待機予備日を1日取って山中3泊を見込んだ
具体的には上高地→横尾(1泊)→奥穂(1泊+予備)→西穂→上高地=バス=中湯温泉(泊)
中湯温泉はI君が予てから泊ってみたいと言っていた温泉宿だ
奥穂で停滞した場合、予備日含め悪天の場合は
昨年同様奥穂から岳沢経由で上高地へ下山するつもりである
しかし実際に入山してからは、幸運にも好天に恵まれたため
8月11日に核心ルートを歩いた後、上高地には下山せず
西穂山荘で1泊した後、焼岳まで従走して中湯温泉へ直接下山することになった
焼山までのあの長い従走路は、難路を歩き通した後の喜びを一層深いものにする楽しい路となった
<今回歩いたルートと時間>
8月9日 : 上高地バスターミナル(12:30)~横尾(16:00) 泊
8月10日: 横尾(5:10)~本谷橋(6:20)~涸沢小屋(9:15発)~奥穂山荘(12:00) 泊
8月11日: 奥穂山荘(5:15)~奥穂(6:15)~ジャンダルム(7:00)~天狗コル(8:40)~天狗岳(9:20)~西穂(12:15)~独標(14:00)~西穂山荘(15:15) 泊
8月12日: 西穂山荘(6:45)~焼岳小屋(10:15)~焼岳(11:45)~中の湯(15:30) 泊
8月13日: 上高地散策後バスにて帰京
<その1 上高地~横尾~奥穂高編>
初日早朝の新宿発高速バスに乗ると、お昼頃には上高地バスターミナルに到着する
高速バスは直接上高地まで運んで貰えるのでとても楽チンだ
さわやか信州号、最近ではすっかり病みつきになってしまった
登山計画書を書いていると、横から突然質問が飛んできた
「何処に登るんだい?」
ルートを答えると、次の様な情報と共に注意を促された
「昨日も天狗の頭付近で100m程も滑落する事故があったばかりだ」
「助けに行った時にはもうなすすべも無かった、特に下りルートでは細心の注意を払って歩け」
と言うのである
二人とも上高地に着いたばかりの観光客の様なルンルン気分はすっかり吹っ飛び緊張感が走った
がしかし、のちのちこのアドバイスはとても効力を発揮する事になる
河童橋辺りは夏休みだけあって流石に大混雑だった
昨年同様河童橋付近のレストランで昼食を済ませると、のんびり横尾へ向かって歩き出した
上高地から徳沢、横尾方面に向かう
何時歩いても、ここの林間は清々しくて気持ちがいい
一泊目を平坦な道を横尾までとするのは一見無駄の様な気もするのだが
これから始まる長時間に渡る従走の準備運動と考えると、とても良い入り方だと思う
雰囲気のいい徳沢園のキャンプ場
ここを通過する度に一度は泊ってみたいと思うのだが
なかなか実行出来ないでいる
徳沢園前の気持ちの良さそうな清流
足をつけてみたい衝動に駆られたがここは先を急ごう
道端では今年も愛らしい花々に出会えて嬉しかった
横尾山荘に到着すると、既に沢山のテントが張られており賑やかだ
早速テントを張って祝杯をあげた
横尾山荘の天場にて
夜になると夜空に満天の星が輝きだした
天の川や色々な星座が楽しめる
星空を見ながら明日からの晴天と無事歩き通せる事を祈った
翌朝、天候は晴れ
気持ちの良い天気に恵まれ幸先の良いスタートを切る
早朝、橋を渡って涸沢へと向う
岩小屋跡
岩の小屋跡と言う事だが、とても中には入れそうもない
横尾谷の樹林帯を進む
暫くするとでっかい屏風の側壁が見えだした
1時間程で本谷橋を渡る
この辺りまで来ると色鮮やかな花たちが目を楽しませてくれた
雪渓の上では爽やかな涼風が駆け抜ける
気持ちがいい雪渓を登る
出発して3時間ほどで涸沢ヒュッテに到着した
カラフルなテント場、上部には涸沢小屋が見える
テント場横の赤い屋根はレスキューの駐在小屋だ
レスキュー隊の人たちに一昨日の遭難事故の話を聞いてみた
特に聞きたかったのは歩いていた方向が西穂→奥穂かその反対なのか、だったのだが
隊員の人もどちらに向かっていたのか知らない様子だった
とにかくあの辺りは浮き石が多くて常に不安定なので注意して欲しいとの事である
どちらにせよ、細心の注意を払って歩くしかない
後日、報道情報を調べた結果
我々と同じ二人のパーティで奥穂→西穂縦走中に遭難された事が分かった
亡くなられた方には心からお悔やみを申し上げたい
涸沢小屋からの素晴らしい景色
ザイディングラードを登り始める
雄大な涸沢カールの雪渓と前穂高岳
東の遠方には常念岳が見える
険しいザイディングラードの登り
だんだん傾斜が厳しくなってきた
奥穂高とミヤマキンポウゲの花園
息を切らせて登っていると上部から黄色い声と共に若い女の子の集団が降りてきた
着ている服装などが可愛らしい
引率していると思われる先生に、I君が「小学生ですか?」と質問すると
笑いながら一人を指さして 「ええ、あいつが小学校5年生でね・・・」 と乗りのいい答えが返ってくる
そのとたん 全員から どっと笑いが起きた
5年生の子が口を尖らせて「本当は高校生」と答えた
屈託がない女子高生たちだった
笑いながら下山する高校生たち
周囲には女子高生たちの様に爽やかなイワツメクサが沢山咲いていた
そう言えば、自分も初めてザイディングラードを登ったのは高校生の頃だった
元気に登った頂上でかじったレモンが酸っぱくて美味しかったのを思いだした
眼下に広がる涸沢カールの美しさも蘇ってきて懐かしかった
荒々しい穂高連峰が目の前に迫ってくる
奥穂高山荘に到着したのは12時過ぎだった
のんびり登ってきたが、全て順調である
早速、テン場に場所を確保して受付を済ませた
小屋で確認した情報によれば明日も晴天である
奥穂高山荘の天場
お昼過ぎには通常のテント場は満杯となり
最後はヘリポートを始め、山荘前の広場や小屋裏まで全てテントで埋め尽くされた
明日登る予定のジャンダルムが顔を出している
雲に隠れているせいか、黒くて不気味な姿である
テントの中からは奥穂へのルートが正面に見える
奥穂への壁に人が沢山張り付いている
夕方頃、騒がしいのでテントの外に出ると
小屋から僅か15m程度上がった所で女性らしき人が倒れていた
下山中に滑落したのだろうか、ぐったりして動かない
テント場近くにある岐阜大学医学部の奥穂高夏山診療所から
スタッフが慌ただしく飛び出して対処していた
そうこうするうちに遠くからヘリが飛んでくる音が聞こえ始めた
救出に来たヘリ
ヘリポートは既にテント場となっていたのでヘリは小屋の前の壁に着陸した
直ぐに女性は収容されたが、無事であることを祈るばかりである
騒ぎが収まると其々夕食の準備に余念がない
我々も明日のルートの事を話し合ったりして過ごす
今年は満月に当たらなかったせいか
テントで横になると満天の星空が見渡せ、天の川が目の前に流れていた
夜中になると、ペルセウス座流星群が盛んに見えた
星空以外のものは何も見えない
次第に自分が宇宙の中を漂っているかの様な錯覚に陥った
宇宙を漂っていると、人の一生がとても短くはかないものにも思えてくる
ふと我に返ると、明日への期待と共に不安の念が過る
明日は核心部を通過するのだ、早く寝なければならない
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