光岳~池口岳縦走
昨年秋に光岳山行を計画していたものの実行に至らず今年こそはと思っていて、その事をS脇君に話したところ一緒に行こうという事になり、秋も始まろうとするこの時期に実現した。
南アルプスが大好きなS脇君は当然の事ながら既に登頂を果たしており今回は2回目となるが、私は初めてなので光岳のみでも全くOKだったが彼は更に南に位置する池口岳へと足を伸ばしたいとの事。ところが光岳から池口岳までのルートは破線ルートであまり人が入っておらずかなり時間もかかりそう。そこで立てた計画は、初日に易老渡から光小屋まで登り、2日目に池口岳を往復した後再度光小屋泊、3日目に易老渡へ戻るという2泊3日の行程だったのだが、光小屋のご主人や当日出会った宿泊者の方と話している内にこの計画を大きく変更する事になったのである。。。
実際に歩いてみると南アルプス最南部の山々の自然は本当に素晴らしく、特に光岳から池口岳を結ぶ稜線では全く人の気配がなく北海道や屋久島などと並んで本州では唯一の原生自然環境保全地域に指定されているだけあって手つかずの自然が残っている。今回は宿泊した光岳小屋のご主人のアドバイスも貰う事が出来、一部不明瞭な所もあったが大きなトラブルもなく歩き通す事が出来た。
また池口岳への道中では小屋で出会った長野県遭難対協の女性隊員とご一緒することになり、色々な登山談義も出来て楽しく忘れられない縦走となった。
毎回の事ではあるが、この様な色々な人との出会いは登山への大きなモチベーションとなっている。
初日は東名高速から身延山地や長大な赤石山脈を大きく迂回して一路易老渡へと向かった。易老渡よりかなり手前の駐車場に着くと幸いまだ車の数は少なくすんなりと停める事ができた。
早速準備をして出発する。昔は易老渡の更に先にある便が島まで車で入れたらしいが災害によって道が崩落している為、これ以降へは入れないそうだ。
林道を易老渡へ向かって歩き出す。天気は上々である。
林道脇には遠山川という綺麗な清流が流れていた。
約1時間程で易老渡に到着。
南アルプスらしい深い森の中の道が続く。
途中、昼食&コーヒータイムで大休止。今日のルートは長いが小屋泊まりなので焦る必要も無い。
苔むした暗い雰囲気の森が続く。
エゾシオガマかと思ったが、葉っぱを見るとセリバシオガマかも?
上部へ来ると険しい登り坂も出てきた。とにかく長いので変化があると嬉しい。
そしてまた苔の森林が続く。
茶臼岳への分岐に到着、まだ半分ということだが稜線へ出られてホットする。
倒木や木の枝の形から風の強さが偲ばれる。少し靄がかかって見通しは悪くなった。
何て立派なトリカブトだろう!こんな立派な花は久しぶりに見た。
ゆく手に西側が大きく崩落した地形が現れた。
稜線上にも拘らず立ち枯れた木々や崩落地などが続いており、かつ人の気配も全くない。
大好きな大文字草が咲いているのを見つけた。時折咲いている花が救いだ。
ちょっと終わりかけだがハクサンフウロも咲いていた。
静高平と書かれた場所に着くと小さな沢に水場があった。
ここで水を確保する。小屋はもう直ぐそこだ。
水場を過ぎると木道の先に小屋が見えてきた。いい雰囲気の小屋だ。
小屋に着くと2階の一番奥の一画をあてがわれた。今夜の宿泊人数は少なくとても快適に過ごせそうだった。
2泊したいと告げると、ご主人が何で?と聞く。計画を告げると池口岳の往復はかなり難儀だからそのまま南側にある池口登山口へと下った方が楽だという。
確かにその通りだが、道が不明瞭なうえ下山後に易老渡へ戻る手段がないと言うと、知り合いのタクシーの電話番号を教えてくれた。実際電話をかけてみると、既に先約で埋まっていて予約が取れなかったが、親切にも同じ町のタクシーを紹介して貰え無事予約も出来た。その話を聞いていた若い女性が、もしそうするなら自分も同行して易老渡へ戻りたいと言うので、話はとんとん拍子で纏まり小屋の宿泊は1泊という事になった。
実はこの女性は何と長野県遭難対協の女性隊員だそうで、南アをパトロールしたりガイドをしたりしているそうだが、池口岳には行った事がなく今回是非歩いてみたいとの事だった。来る前に調べた限りでは池口岳への破線ルートはとても不明瞭だと分かっていたので彼女の同行は願ってもない話だった。
その上、小屋のご主人がこのルートのポイントとなる場所の注意点を教えてくれたのだから我々にとってはもう願ったりかなったりである。
翌日も雲が多かったものの朝焼けが望めそうだったので小屋の近くの高台に出てみた。
暫くすると富士山の周辺が真っ赤に染まった。富士山の綺麗なシルエットが見られてこんなラッキーなことはない。
よく見ると富士山の向こう側の雲の合間に朝日が昇っている様に見えた。これだから山頂付近での宿泊は止められない。
朝食を済ませると我々は先行して光岳へと向かった。私は初登頂である。
そして迷わず光石へと向かう。麓から見るとこの石が光って見えるそうだが本当かと思える程普通の大岩にしか見えない。
岩に登って見ると向こう側に池口岳など南アの最南端の山並みが見えた。
岩の大きさがわかる様に光岩の上で撮って貰う。
岩の合間から池口岳の双耳峰に朝日が当たってるのが見えた。綺麗な山だった。
これから歩く加加森山とその遥か向こうにも雲海に突出た山並みが見える。あれは白山か?
そしていよいよ池口岳方面へと歩を進める。
北側を見ると赤石、聖岳方面の山が見える。
昨日より更に木の密度が高く、踏み跡も薄い道が続く。
山の影から夕暮れの様な富士山のシルエットが見える。
これから向かう池口岳を差して。
池口岳や鶏冠山、更に南部に位置する山々が良く見渡せた。
是非とも歩いて見たかったという池口岳、加加森山を思案深く見つめるS脇君。
我々が光石へ立ち寄っている間に先行していた遭対協の女性が鞍部を歩いているのが見えた。
この後女性と合流し、最も道迷いしそうなポイントへと突入。
しかし、事前に聞いていた通り歩けたしところどころにテープもあり迷う事も無く通過する。
尾根に出ると時折標識も出てくる。道も明瞭だった。
無事加加森山に到着。
加加森山を過ぎるとまたしても靄が出始めた。
途中、立ち枯れの稜線を進む。
加加森山の西斜面は急峻な崖となっていて北側から見えた加加森山とは様子が違って見えた。
加加森山を過ぎて一旦下るといよいよ池口岳が迫ってくる。
足元の道が見えない程木々に覆われていた。
池口岳へのジャンクションに到着。池口岳へと向かう。
遂に池口岳北峰に着いた。女性は南峰を見ておきたいと言うので我々は北峰だけで満足なので一旦分かれて先に進む事にした。
南峰は険しく切り立って見えた。
暫く池口登山口へと進み小休止。例のコーヒータイムと洒落こむ。
そうこうしている内に女性が追い付いて来て合流出来た。彼女は若く遭対協のメンバーだけあってやはり想像以上に健脚だった。
この後はなだらかだが長い稜線歩きが続いた。途中、S脇君が動物らしき気配を感じたがその姿は見る事は出来なかったという。
話を聞けば近くに熊がいた様だった。ここは人より熊の密度の方が高いに違いない、遭遇せずに済んで良かった。
そして登山口へ下山すると既に待っていたタクシーに乗って無事易老渡へと帰着する事が出来た。
タクシーの中では運転手さんと女性が地元の美味しい肉屋さんの話で盛り上がり、是非店に寄って行くように勧められた。勧められた店には寄れなかったが近くのスーパーで遠山郷名物の清水屋ジンギスカンと鶏肉を買って帰った。こんな山間の地で焼肉が有名だったとは思いもよらなかったが、偶然の出会いによって色々な事を知り、また一緒に経験が出来た事が嬉しい思い出となった。また何処かでお会い出来ればと思う。